• テキストサイズ

Cage -檻ー【気象系サスペンスBL】

第23章 Deep Love


「但し…」

自然と緩んで行く頬を、キュッと引き締めるような、井ノ原さんの真剣な声。

「このことはあくまでも“内密”にお願いします。もし上にバレでもしたら、俺も長野さんも…」

井ノ原さんが首元に宛てた手をシュッと横に引いた。

それは“首”を意味している、と判断した俺は、井ノ原さんに向かって頭を下げた。

「勿論です。決して他言はしませんから…」

「俺ね、実は弟がいたんですよ…もう、何年か前に死にましたけどね? 生きてたら、丁度コイツと同じくらいなんです。だから、コイツのこと放っておけなくて…」

心なしか潤んて見える眼鏡の奥の瞳が、愛おしそうに智君に向けられた。

「ま、弟の方がもっと可愛げがありましたけどね?」

「なんだよそれ…。ふざけんな…」

ぶっきらぼうな口調だけど、本当はそう言って貰えて嬉しいんだよね?

膨れて俯いた顔が、少しだけ綻んでいる。

「ってことで、必要な物は一通り揃えておきましたけど、何か足りない物があれば今のうちにどうぞ?」

見ると棚の上には、弁当やら洗顔用具やらが入った袋が置いてある。

「いえ、ここまでして頂いて…。感謝します」

「あと、トイレとシャワーは完備してあるので、そこをお使い下さい。それと…」

不意に俺から視線を逸らした井ノ原さんが、バツの悪そうな顔をして頭を掻いた。
/ 609ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp