第23章 Deep Love
「ハッキリ言えよ。ここに翔を呼んだ、ってことは、どうせいい話じゃないんだろ? 勿体ぶってんじゃねぇよ…」
車椅子からベッドに移動した智君が、頭をクシャッと掻き毟った。
「ったく、お前は普段ボケーっとしてるくせに、変なとこ気が短くて適わない」
ヤレヤレとばかりに井ノ原さんが肩を竦める。
「まあ、そう悪い話でもないから安心しろ」
ベッドの端に座った智君の右足を、井ノ原さんがベッドの上に持ち上げる。
「櫻井さん、今夜一晩、コイツの世話頼めますか?」
「は? それは一体どうゆう…?」
「言った通りの意味、ですが? 実は、担当の看護師が体調を崩してしまったそうでしてね? コイツの世話をする人がいないんです」
そこまで言われても、俺は井ノ原さんの言葉の意味が分からなくて、二人の顔を見ては、頭を抱えた。
「見ての通り、コイツにはまだ人の手が必要なんです。それを、あなたに、と言っているんです。…尤も、今夜一晩だけ、ですがね?」
「俺…でいいんですか?」
願ってもない話だった。
今夜一晩だけでも、智君と…
そう思ったら、逸る気持ちを抑えきれず、俺はパイプ椅子がひっくり返る勢いで立ち上がっていた。
「あなたでいいんですよ? 寧ろ、あなたじゃなきゃ、長野さんが警護に当たっている意味がない」
井ノ原さんが、閉じたドアに視線を向けた。