第23章 Deep Love
病院に着くと、岡田に言われた通り、病室へは寄らず真っ直ぐ屋上へと向かった。
エレベーターを使って最上階まで上がる。
エレベーターホールを抜け、外へと続く自動ドアが開くと、陽射しの割には冷たい空気が一気に吹き込んでくる。
一瞬ブルッと身体を震わせながら、一歩足を踏み出すと、入院患者の物なんだろうか…、洗濯物がアチコチで風に舞っていた。
俺はそれを掻き分け、屋上に作られたビオトープを目指した。
無機質な建物の中に、唯一自然を感じられる場所。
そこに行け、と後から岡田から貰ったメールには書いてあった。
そこに何があるのかは、一切書いてはいなかった。
でも俺は予感していた。
そこに行けば彼が待っている、と…。
そしてそれは現実になった。
「智…君…?」
瞼を閉じ、暖かい日差しを受ける智君を驚かせないよう、そっと声をかけてみる。
すると瞼がパチッと音を立てて開き、車椅子に乗せられた智君が、ゆっくりと俺を振り返った。
「翔…、どうしてここに…?」
今にも風に掻き消されてしまいそうな、小さな声。
俺は逸る気持ちを抑えきれず、”抱きしめたい”その一瞬の衝動のままに駆け出していた。
それなのに…
「来るな」
その一言に、俺の足は智君まで後数メートルのところで止まってしまった。