第23章 Deep Love
「とりあえずどういうことか説明してくれない? 井ノ原さんがどうしたって…?」
岡田から鞄を受け取り、それを車の助手席に置く。
ドアを閉めると同時に詰め寄る俺に、岡田がヤレヤレとばかりに肩を竦めた。
「だから言ってるだろ? 病院に行けば分かるって…。ったく、飲み込みの悪い奴だ」
悪かったな…、生憎俺は岡田みたいに柔軟な思考は持ち合わせてはいない。
「分かったよ…。行けばいいんだろ? で、所長には…」
「それなら心配するな。所長には、櫻井は俺の用事で出張に出て貰ったと伝えてあるから」
流石岡田だ。
手回しがいい。
「…つか、何、出張って…」
一旦は運転席に滑り込ませた身体を、もう一度外に出すが、すぐに押し戻されてしまう。
「細かいことは気にするな。とりあえずお前は病院に行け。で、真っ直ぐ屋上に行くんだ。いいな?」
「だから、意味わかんな……っ!」
言いかけた俺の言葉を遮るように、ドアがバンと閉められる。
窓の外には、満面の笑みを浮かべて、ヒラヒラと手を振る岡田。
コイツ…
何か企んでる…?
岡田が”早く行け”とばかりに運転席の窓を叩く。
俺は頭の中に浮かんだ幾つもの”?”を掻き消すように、エンジンキーを回した。
そして智君が入院している病院に向かって車を発進させた。