第22章 ray of hope
詰め寄る俺に、井ノ原がやれやれとばかりに大きな溜息を一つ落とした。
「あのな、さっきも言ったが、アイツはもう壊れてたんだよ? どうしてそうなったのか、俺も詳しくは知らないが、心がな…壊れてたんだよ」
だとしたら、それは俺に原因があるんじゃないか?
俺が偽りだったとしても、結との接点を持ってしまったから。
「それにな? アイツは、あろうことか、刑務所内で障害事件を起こしたんだ。ある種の“危険人物”と看做されても文句は言えんだろうよ…」
“危険人物”
その言葉が俺の胸に突き刺さる。
アイツが…マサキみたいな奴が、“危険人物”であるわけがない。
もしマサキをあんな行動に走らせたのだとしたら、それはやっぱり…
「俺のせいだ…。俺がマサキを殺したんだ。全部俺が…!」
俺が結と関わりを持ちさえしなければ、マサキは…。
「ごめん…、マサキ、ごめっ…」
ギュッと噛みしめた唇から零れた滴が、シーツにポツポツと赤い染みを作って行く。
「おい、落ち着けって! お前のせいじゃないから、お前が悪いんじゃない!」
井ノ原がティッシュで俺の唇を押さえながら、いつになく声を荒げた。
「”罠”だったんだろ? お前は利用されただけなんだろ? だったら…」
俺の肩を揺さぶりながら、少しだけ多く水分を含んだ目が俺を覗き込んだ。