第22章 ray of hope
井ノ原や長野がどんなに言葉を尽してくれても、
俺がマサキを殺した…
その事実は、まるで呪縛のように俺の奥底に住み着いていて…
俺はそれから逃れることが出来ず、度々当たり散らしては、周りを困らせた。
それでも時間だけは何事もなかったかのように流れるんだから、無情なもんだ。
東山のスパルタとも言えるリハビリの効果もあってか、俺は杖を頼りに歩けるまでに回復した。
元通り、とまではいかなくても、自分の足で立って歩けるまでになったことは、俺にとっても大きな進歩だった。
そうなると当然のように”退院”の話が俺の下に舞い込んでくる。
勿論、俺の場合は”退院”というよりは”医療刑務所への送致”と言った方が正しいのかもしれないが…
「まぁ、ここまで良く頑張ったな、とだけ言っておこうか?」
クリップボードを脇に挟み、白衣のポケットに両手を突っ込んだ東山が俺を見下ろす。
「なんだよそれ、もう少し言い方あんだろうが…」
東山の、感情のあまり読み取れない視線にも、もういい加減慣れた俺は、悪態をついて見せる。
「これでも褒めているつもりだがな? それよりも…、このところ井ノ原の姿を見かけんが…。お前も寂しいだろ?」
「知らねぇよ。アイツだって仕事があんだろ? それに、別に寂しくなんかねぇし…」
嘘だ…
ホントは誰でもいいから傍にいて欲しかった。
翔…、
お前に会いたい…会えなくなる前に、もう一度だけ…
『ray of hope』完