第22章 ray of hope
「後は宜しく」
井ノ原の肩をポンと叩いて東山が病室を出て行く。
白衣の裾を翻したその後ろ姿に、井ノ原が深々と頭を下げた。
「お知合い、なんですか?」
長野が東山と井ノ原を交互に見ながら、目を丸くする。
「あぁ、まあね。東山さんは医大時代の先輩でね。今でも頭が上がらないんですよ」
井ノ原が長野に向かって肩を竦めて見せた。
「そうだったんですね。道理で…」
慌てた様子で長野が先の言葉を飲み込み苦笑する。
言えない、ってことは俺に聞かれちゃ不味い話だ、ってことだよな?
まぁ、いい。
俺も別に知りたいとは思わないから。
「ところで、調子はどうだ? 随分顔色は良くなったようだが」
井ノ原が手元のリモコンを操作して、ベッドの背上げの角度を調節する。
「見ての通りだよ…」
ベッドの上で過ごす変化のない毎日には、いい加減辟易としてはいるが…
「まあ、東山先輩に任せておけば、安心だ。あの人は優秀な先生だから」
井ノ原が誇らしげに東山を讃えるが、俺にとってはただのスパルタ好きな男にしか思えない。
「そんなことより、あいつら…松本と二宮、どうしてる? あと、マサキのことも…」
ずっと気になっていたことを、長野に向かって切り出した。