第22章 ray of hope
徐々に体調が回復してくると、今度は動かなくなった足のリハビリが始まった。
本来なら、俺みたいな奴は別のトコに送致されるらしいが、そうならなかったのは、多分井ノ原が裏で話を付けてくれたからだ、と思う。
「術後の経過も良好なようだし、後は君の“やる気”次第だね」
理学療法士の東山が、俺の足をマッサージしながら、実に淡々とした口調で言う。
「まあ、俺のやり方に着いて来れるかは、疑問だけどね」
常に上からの言葉に、つい苛立ちを隠しきれない俺は、感情の見えないその切れ長の目を睨み付けた。
「おや、何か不満でも?」
「別に…。何でもねぇよ…」
文句の一つでも言ってやろうかとも思ったが止めた。
きっとコイツに逆らった所で、俺に勝ち目なんてないことは分かりきっている。
「以前のように、とは行かないが、少しでも良くなる方向へ向かえるように、俺も努力するから、君も最大限の努力をするように」
どこまでも“上から”な物言いに、返事をするのも面倒臭くなってくる。
「では、今日はこの辺で…」
寝巻きの裾を合わせ、布団をかけようとした東山の手を、俺の手が咄嗟に掴んだ。
「何か?」
東山の切れ長の目尻が、少しだけ下がったような、そんな気がした。