第22章 ray of hope
「はい、出来ましたよ。今呼んできますから、ちょっと待っててくださいね?」
看護師は明るい笑顔を残して病室を出て行った。
それと入れ替わるように翔がまた病室へと入って来た。
そしてパイプ椅子に掛けられたコートを手にすると、ベッドの脇に立ち、俺の額にキスを一つおとした。
「俺、行くね?」
震える指先が俺の頬をスルリと撫で、翔は俺に背を向けた。
行くなよ…
瞬間、引き留めたい衝動に駆られる。
「明日…も…」
言いかけた言葉の先を飲み込んだ。
”明日も来てくれるか?”
そう言えばきっと翔は困った顔で笑うだろうから…。
翔を困らせたくなかった。
俺は黙って病室を出て行こうとする翔の背中を、ただ見送ることしか出来なかった。
ゆっくりと扉が閉まり、訪れた一人の空間。
唐突に襲って来る孤独と寂しさ…
こんな思いをするなら、
こんなにも心が寒くなるなら…
目覚めなければよかった…
それがたとえ翔を悲しませることになったとしても…
目覚めなければ、もっと翔の傍にいられたのに…
「しょ…寒いよ…寒くて仕方ないよ…」
俺は布団を引き寄せ、頭まですっぽりと被ると、声を殺して泣いた。
翔の温もりを求めて…
その翌日から、翔が病室を訪れることはなくなった。