第22章 ray of hope
消灯を告げるベルが鳴った。
「医師(せんせい)、呼ぶね?」
未練の残る唇を離し、翔がコールボタンを押したが、今度は引き留めなかった。
『どうされました?』
「意識が…戻りました…」
『すぐに伺います』
翔と看護師のやり取りを、俺は翔の腕の中で聞いていた。
ほんの僅かな時間も、この温もりを…この腕を放したくはなかった。
「智君、ごめんね?」
そう言ってゆっくりと解かれた腕。
ノックを擦る音がして、翔がベッドを降り、病室の扉を開けた。
同時に数人の看護師を引き連れた医師が入ってくる。
「大野さん、ここがどこだか分かりますね?」
医師の質問に、俺は頷いて応える。
翔のいなくなった傍らが…寒い…
「じゃあちょっと診察しますからね…」
ベッドに横たわったままの俺の身体を、医師が細かく調べて行く。
「問題なさそうですね」
聴診器を耳から外し、首に掛けた医師は、看護師に何かを告げると、早々に病室を出て行った。
一度も俺と目を合わせることなく…
所詮犯罪者に対する扱いなんて、そんなもんなのかもしれない。
それよりも翔は…
俺は首だけで、翔がいるだろう廊下に視線を向けた。
「付き添いの方、ですか?」
俺の寝巻を着せ付けていた看護師がその手を止め、廊下の方を伺った。