第21章 Prayer
長瀬さんと侑李が帰った頃には、窓の外はすっかり夜の帳に包まれていた。
日が短くなると、時が経つのが余計に早く感じられる。
「そろそろカーテン、閉めようか?」
ずっと着たままだったコートを脱ぎ、パイプ椅子の背凭れにかけると、俺は窓辺に立った。
「雪…?」
どうりで冷え込む筈だ。
窓の外は、粉雪がチラつき始めていた。
俺は肩をブルっと震わせてから、カーテンを引いた。
その時だった。
俺の耳元で智君の声が聞こえた。
(雪が積もる前に帰れよ?)
と…。
「えっ…?」
驚いて振り向いた視線のその先では、未だ眠ったままの智君の寝顔。
固く目を閉じた顔には、何の変化も見られない。
「まさか、な…。そんなことあるわけ、ないよな…」
きっと空耳だ…
そう自分に言い聞かせる。
智君を思うあまり、とうとう幻聴まで聞こえるようになったかと思うと、笑いが込み上げて来る。
「俺、めっちゃ惚れてんじゃん、智君に…」
自嘲気味に笑って、読みかけの小説を手にベッドに潜りこんだ。
眠ったままの智君の身体を少しだけ起こし、俺の肩口に頭を凭せかけてやる。
大人二人が眠るには窮屈なベッドの中、俺達は身体をピッタリと密着させた。