第21章 Prayer
井ノ原医務官との電話が終わり、病室に戻ると、警備にあたっていた刑務官の一人が、”今回だけですよ”と言って病室のドアを開けてくれた。
どうやら井ノ原医務官が話を着けてくれたようだった。
俺はスマホを再度預けると、侑李の細い肩を叩いた。
「智君に会ってやって?」
「ありがとうございます、櫻井さん…」
侑李が涙で濡れた頬を作業服の袖で拭った。
ベッドの上の智君は、いつもと変わらない、穏やかな顔をして眠っていた。
「智君、分かるかな? 侑李が来てくれたよ?」
何の反応も示さない頬を撫で、耳元で話しかける。
「ほら、君も…」
突っ立ったまま動けずにいる侑李の背中を押してやる。
「あの…僕…」
侑李が声を詰まらせる。
無理もない、か…。
「あのね? 俺もさ、最初は半信半疑だったんだけどさ、聞こえてるんだって、ちゃんと…。眠ってるだけで、ちゃんと声は届いてるんだよ? だからさ、話しかけて上げて? きっと智君も喜ぶから」
侑李の手を取り、智君の手を握らせてやる。
「ね、暖かいでしょ? 生きよう、って頑張ってるんだよ?」
「兄ちゃん…」
侑李が零れ落ちそうな涙をグッと堪えて、智君の耳元に口を寄せた。