第21章 Prayer
病院に着くと、俺の到着を待っていたのか、長瀬さんと侑李が病室の前に立っていた。
「どうしたんですか? 連絡下さればこちらから伺ったのに…」
警備の刑務官に頭を下げ、所持品を一通り預けた。
「いえ、特にこれと言った用事はないんですがね、侑李がどうしても大野さんの様子を見に行きたい、って言うもんですから…」
長瀬さんが、閉されたドアの前で涙を浮かべる侑李を顎でしゃくった。
兄弟のように育って来たんだ。
きっと俺と同じくらい…いや、もしかしたら俺以上に胸を痛めているかもしれない。
でも…
「一応掛け合ってはみますけど、面会出来るかどうかは…」
俺が入室を許可されているのは、あくまで井ノ原医務官と坂本刑務官の口添えがあってのこと。
でも、侑李の場合は…
「ええ、それは勿論です。ただ、どうしても、ってアイツが聞かないもんですからね…」
「そうですか…」
智君を思って涙を流す侑李の願いを、俺は叶えてやりたいと思った。
「ちょっと待ってて下さい」
俺は長瀬さんに言うと、預けた所持品の中から、スマホを取り出した。
各フロアに設置された食堂に入ると、俺は井ノ原医務官に電話をかけた。
井ノ原医務官の口添えがあれば…そう思った。