第21章 Prayer
一週間経っても、智君の意識が戻ることはなかった。
井ノ原医務官と長野刑務官の口添えもあって、俺は出勤前の僅かな時間と、就業後から面会時間ギリギリまでの時間を、智君の病室で過ごしていた。
別に付き添っていたからと言って、智君の状態が変わるわけではない…
そんなことは百も承知の上だった。
出来ることは何でもした。
毎日、決まった時間に看護師が運んでくるタオルで、骨が浮き出る程痩せ細った身体を清めてやる。
髭が伸びて来れば、剃り残しが無いように、丁寧に剃ってやった。
それだって看護師に任せればいいことかもしれないけど、もうこれ以上誰にも智君の身体を触れさせたくはなかった。
聞こえてるのかも分からないのに、毎日、その日あったことを、話して聞かせた。
答えなんて返ってくるわけじゃないのに…
報告が済めば、今度は唯一病室に持ち込むことが許された小説に没頭した。
食事だって、当初は食堂に行ったりもしたけど、その僅かな時間も、智君の傍を離れたくなくて、売店で購入した弁当に変えた。
冷えた弁当は、とても味気ない物だったが、それでも良かった。
例え答えてくれなくても…
例え固く閉じた瞳が俺を見てくれなくても…
それだけで…
傍にいられるだけで良かった。
君が生きてさえいてくれれば、それだけで俺は…