第21章 Prayer
パタンと背後でドアが閉まった。
同時に漸く訪れた二人だけの時間。
俺はすっかり短くなった智君の髪を撫でた。
俺の好きだった、あの柔らかい髪の感触は、今はもう無い。
額に唇を落とし、色を無くした頬にも…
「辛かったね…? 苦しかったね?」
こんなに痩せてしまう程…
生きることを辞めてしまう程…
君にとっては辛く、苦しいことばかりだったんだよね?
ごめんね?
気づいて上げられなくて…
君の傍にいて上げられなくて…
俺ね、勘違いしてたんだ。
君は”強い”って、勝手に思い込んでいたんだよ。
本当はこんなにも弱いのにね?
バカだよね、俺って…
ねぇ、神様って本当にいると思う?
君は笑うかもしれないけど、俺はいると信じてるんだ。
だからさ、祈らせてよ…
例え叶わない願いでもいいから、祈らせて?
君を俺の元に返してください、って…
君なしじゃ、俺は立っていられないんだよ…
君がいない世界は、俺にとっては地獄も同じなんだよ…
だから…
「いつまで寝てんだよ?
いい加減起きなよ…
ねぇ、俺を見てよ…。
呼んでよ”翔”って…
なぁ、呼べってば!
”翔”って呼べよっ!
頼むから帰ってきてくれよ…
俺を一人にすんなよっ!」
シンと静まり返った病室に、俺の叫びが響いた。