第19章 Showing
喜多川建設は、事件後、暴力団関係者との癒着が取り沙汰されながらも、倒産に追い込まれることもなく、変わらず経営を続けている。
寧ろ、黒い噂が流れた今も、業績は右肩上がりの状態を維持している。
裏にまだ大きな力が動いている、ってことか…
俺は喜多川建設に関する記事、そして施設の経営についての記事をプリントアウトし、ファイルに閉じた。
時刻は午前五時…
出勤までの時間、仮眠を取るべく、俺は着替えをすることもないまま、ベッドに潜り込んだ。
疲弊仕切った身体は、ベッドに横たわった瞬間、緊張感から解放され、脱力した。
疲れた…
深い溜息と共に、疲労がどっと身体に押し寄せてきた。
瞼を閉じ、常にフル回転で動き回る思考回路を停止させる。
なのに眠れないのは、やはりどこかで智君のことを考えてしまうからなのだろうか…
俺はベッドの片隅に置いた、智君が気に入っていたブランケットを引き寄せ、微かに残る智君の匂いを吸い込んだ。
そうしていると、不思議なことに心が安らぐのを感じた。
眠ろう…
今は、眠ろう…
ジワジワと押し寄せて来る睡魔に身を委ねよう…
そう思った時だった。
けたたましい着信音と共に、枕元に置いたスマホが震え出した。
一体誰だ、こんな時間に…
ボヤけた視界を凝らしながら、スマホ画面を見る。
そこには井ノ原医務官の名前が表示されていた。