第19章 Showing
俺は車を走らせた。
今にも叫び出しそうな心と折り合いを付けて…
早朝の道路は、まるで俺の心情を気遣っているかのように、空いていた…
信号待ち…
俺は赤いランプを歪んだ視界の中、ジッと見つめていた。
その時だった…
俺の傍らに、懐かしい匂いを纏った風が流れた。
ごめんな、翔…
もう俺のために泣くな…
その風は俺の耳元に囁きかけると、あっという間に通り過ぎて行った。
瞬間、俺はハンドルに顔を埋めた。
後続の車が鳴らすクラクションの音だけが、早朝の街に響いていた。
『Showing』完