第19章 Showing
深山さんが、調書を指差す。
「ここ、見て何か気づきませんか?」
俺も、そして岡田も、深山さんの指が指し示す箇所に視線を向ける。
「あっ、これって…、まさか?」
顔を上げた俺に同調するように、岡田も顔を上げる。
「ああ、その“まさか”かもしんねぇな…」
俺達は三人で顔を見合わせた。
「偶然にしては、タイミング合い過ぎだよな?」
「ちょっと待って…」
俺はポケットから手帳を取り出し、ページを捲った。
確か、どこかに書いた筈…
「あった…」
そこに記されていたのは、初めて侑李の元を訪ねた時に、記録程度に書いた走り書き。
「やっぱり…か」
そこに記された数字に視線を落とし、岡田が薄らと無精髭を蓄えた顎を手で撫でた。
「でも、これが偶然じゃないとしたら…」
そう、これが偶然じゃないとしたら、この事件の裏で、何らかの“権力”が動いていることになる。
「調べてみる価値はありそうだな、櫻井?」
でもどうやって?
俺達が踏み込める範囲には限度がある。
ましてや背景に強大な権力が動いているともなれば、そう簡単には踏み込んでいけるとは、到底思えない。
俺は岡田が次の言葉を発するのを待った。
でも、先に口を開いたのは、深山さんだった。
「面白くなってきましたね?」
「ああ、実に興味深いね…」
二人が顔を見合わせ、ニヤリと笑った。