第19章 Showing
二人は俺を他所に、話をどんどん進めて行った。
正直、面白くはない。
しかしながら、若いながらも“敏腕”と呼ばれる二人だ…俺みたいな駆け出しが口を挟んでは、変に話を拗らせるだけだ。
俺は二人のやり取りを、可能な限り持ち込んだタブレット端末に打ち込んだ。
「櫻井さん、ちょっと調べておいて欲しいんですが…」
「何を…?」
「大野さんと侑李君がいた施設、それと伊藤結がいたとされる施設、双方の経営、若しくは運営に携わっていた関係者がいないか、調べて欲しいんです」
明後日までに、と付け足して、深山さんはカップに残っていたコーヒーを、一気に飲みほした。
「わ、分かりました…。で、深山さんはどちらに…?」
早々に席を立とうとした深山さんを、俺は引き止めた。
「僕ですか? 僕はちょっとそこまで散歩に…」
深山さんとは何度か顔を合わせているが、やはりどこか掴めない。
俺は苦笑いを浮かべたまま、深山さんの背中を見送った。
「じゃ、そろそろ俺も戻るわ」
「ん、ああ…」
テーブルの上に所狭しと広げた資料を纏め、岡田も緩めたネクタイを絞め直した。
「なあ、岡田?」
ポケットから取り出したスマホを確認する岡田。
「なんだ? どうした?」
ありがとう…
「…何でもないよ。それより、早く戻んないと、また所長にどやされるぞ?」
俺は伝えたい言葉を飲み込み、岡田のケツを叩いた。