第19章 Showing
「分かりませんか?」
尚も詰め寄る深山さんに、未だ答えの見つからない俺は、黙って頷いてみせた。
「そうだな、お前には分からんかもしれんな…」
岡田まで…
「俺の一体何が…」
「あのな、別にお前を責めてるわけじゃないんだよ?」
だったら何が…?
「お前はさ、両親がちゃんと揃った、所謂“幸せな家庭”で育った。しかも、普通よりも裕福な、な?」
「それがどうして?」
確かに両親は揃っていた。
形ばかり、ではあったが…
でも、傍から見れば、幸せそうに見えたかもしれない。
少なくとも…裕福ではあったことに違いない。
「施設で育った子供達はさ、理由は様々だが、皆親を失くし、住む場所も失くした子供達ばかりだ。そんな子供達にとって、施設は唯一、自分達が生きて行ける場所なんだよ」
「あっ…」
俺は言葉を無くした。
自分が当たり前のように手にしていた物は、彼らにとっては得ようと思ったって、得られない物ばかり。
それなのに、生きるための場所を奪われたとしたら…?
「逆らうことなんて、出来ないですよね?」
例えそれが人の道に外れたことだと分かっていたとしても、だ…
「なんてことだ…」
俺は思わず頭を抱え込んだ。
「でも、問題はそこじゃありませんよ?」