第19章 Showing
調書によれば、結は雅紀の父親に養女として引き取られるまでの10年間を、児童養護施設で過ごしている。
どういった経緯で結が雅紀の父親の養女になったのかは、施設自体が取り壊しになっているため、残念ながら記されていない。
勿論、施設の関係者を探しはしたが、行方は誰一人として掴めなかった。
「なあ、もし、だよ? この結って子が、その…、何て言うか…」
考えたくはない。
いや、でも現に侑李は…
だとしたら、あまりにも…
俺は声を詰まらせた。
そんな俺の様子を見兼ねたのか、深山さんが少しだけ身を乗り出した。
「人身売買、で間違いないでしょうね」
「そんな…」
侑李だけでなく、彼女もまた私腹を肥やすための道具にされていた、と…?
「考えたくはないが、そう考えるのが妥当だろうな… 」
岡田が苦渋に満ちた表情で、ポツリ呟く。
「でも、仮にそうだとして、どうして施設の子供達が?」
それでなくても不幸な生い立ちの子供達なのに…
それ以上の苦しみを強いられるなんて…
あまりにも悲しすぎるじゃないか…
「櫻井さん、あなたの言いたいことは分からります。でも、だからこそ…とは、考えられませんか?」
「だからこそ…?」
俺は深山さんの言葉の意味が分からず、首を傾げた。