第18章 Fallen Ⅱ
「そろそろ俺達行かないと…」
井ノ原と長野が腰を上げた、その時だった。
病室の外で警備をしていた刑務官の一人が、青ざめた顔で入って来た。
「長野刑務官…、それに井ノ原医務官、ちょっと…」
三人が顔を突き合わせてコソコソと話を始める。
(どうした? 何があった?)
俺の声が届く筈もなく、俺はその様子をただ眺めていた。
「噓だろ? 何かの間違いじゃ…」
長野が突然青ざめた顔で声を荒げた。
「だってあそこは…」
一体何の話だ?
「シッ…、聞こえる…」
井ノ原が、咄嗟に長野の口を手で塞いだ。
その様子から察するに、少なくとも俺に聞かれちゃマズイ話だ、ってことは間違いない。
俺に関係する何かが起きた…ってことだろうな。
警備の刑務官が病室を出て行き、三人だけになったところで、俺は井ノ原から渡されたメモ帳とペンを手にした。
『何があった? 俺には言えないことなのか?』
二人が青くなった顔を見合わせる。
答えられないこと、なんだよな…?
そうなんだろ?
『もういいよ。帰れよ』
俺はメモ帳とペンを二人に投げつけ、布団を頭から被った。
「じゃあ、また来るから…」
二人が病室を出て行くと同時に、俺は布団から顔を出した。