• テキストサイズ

Cage -檻ー【気象系サスペンスBL】

第18章 Fallen Ⅱ


伝えたいのに伝わらないもどかしさ…
自分の力では動かすこともままならない身体…

それらがやがて俺を苛立たせた。

溢れ出そうになる涙と、湧き上がってくる怒りにも似た感情をやり過ごそうと、俺の手はシーツをギュッと握り締めていた。

そんな俺の様子に、二人の刑務官は溜息交じりに首を傾げるばかりだった。

その時、乱暴に開かれたドアから、息を切らせ駆け込んで来たのは、井ノ原と長野だった。

二人は俺を見るなり、安堵した様子で息を吐き出した。

長野に至っては、今にも零れ落ちそうな涙を隠すように、帽子を目深に被っていた。

そんな二人の様子に、二人の刑務官は、やれやれとでも言わんばかりに顔を見合わせ、軽く敬礼を済ませ、病室を出ていった。

「お前の意識が戻った、って病院から連絡貰ってな…。大急ぎで引き返して来たんだぜ?」

井ノ原が額に浮かんだ汗を袖で拭った。

「それより、身体は? 痛みとかはないのか?」

俺は井ノ原に向かって頷いて見せた。

「そっか、良かった…。一先ず安心、ってとこだな」

ホッと胸を撫で下ろした井ノ原のシャツの裾を引っ張る。

「ん、どうした?」

(俺はどうしてここに?)

必死に声を絞り出そうとするけど、俺の口から零れるのは、やっぱり空気だけだった。
/ 609ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp