第18章 Fallen Ⅱ
伝えたいのに伝わらないもどかしさ…
自分の力では動かすこともままならない身体…
それらがやがて俺を苛立たせた。
溢れ出そうになる涙と、湧き上がってくる怒りにも似た感情をやり過ごそうと、俺の手はシーツをギュッと握り締めていた。
そんな俺の様子に、二人の刑務官は溜息交じりに首を傾げるばかりだった。
その時、乱暴に開かれたドアから、息を切らせ駆け込んで来たのは、井ノ原と長野だった。
二人は俺を見るなり、安堵した様子で息を吐き出した。
長野に至っては、今にも零れ落ちそうな涙を隠すように、帽子を目深に被っていた。
そんな二人の様子に、二人の刑務官は、やれやれとでも言わんばかりに顔を見合わせ、軽く敬礼を済ませ、病室を出ていった。
「お前の意識が戻った、って病院から連絡貰ってな…。大急ぎで引き返して来たんだぜ?」
井ノ原が額に浮かんだ汗を袖で拭った。
「それより、身体は? 痛みとかはないのか?」
俺は井ノ原に向かって頷いて見せた。
「そっか、良かった…。一先ず安心、ってとこだな」
ホッと胸を撫で下ろした井ノ原のシャツの裾を引っ張る。
「ん、どうした?」
(俺はどうしてここに?)
必死に声を絞り出そうとするけど、俺の口から零れるのは、やっぱり空気だけだった。