第18章 Fallen Ⅱ
どれだけの間闇の中を彷徨っていたんだろう…
カーテン越しに差し込む日差しが、目に痛い。
眩しすぎる視界を遮ろうと上げた腕に、微かに残る涙の跡…
俺を呼ぶ翔の声…
あれは夢じゃなかったんだ…
翔は確かにここにいた。
(…翔…)
声に出してその名前を呼びたいのに、カラカラに乾いた喉が張り付いて、上手く声に出来ない。
それに…
まるで鉛のように重いこの身体…
(誰か…)
頼りにならない腕を支えに、なんとか上体を起こすが、思うように動かない身体は、そのままベッドの下に滑り落ちてしまう。
俺は冷たい床に這いつくばりながら、自由の利く手で床を何度も叩いた。
(誰か…!)
(翔っ…!)
その音に気付いたのか、漸く扉が開いた。
飛び込んできたのは、大柄な男二人。
二人は床に這いつくばる俺を見るなり、慌てた様子で駆け寄ってきた。
「先生を…!」
一人の刑務官が俺を抱き起し、もう一人はナースコールのブザーを押した。
『どうされましたか?』
おそらくは看護師だろう…女性の声がスピーカーから聞こえてきた。
なんだ、始めからそうすりゃよかった…
俺は自分の馬鹿さ加減に、笑いが込み上げてくるのを感じた。