第18章 Fallen Ⅱ
暗い暗い、一寸先も見えない真っ暗な闇の中で、俺は膝を抱え、背中を丸めて座っていた。
目を瞑り、耳を塞ぎ、心を閉して…
全ての感情に蓋をしてしまえば…
そうしていれば、不思議と恐怖が薄れて行くことを、俺は知っているから…
それでも時折差し込んでは消える光に、俺は必死で手を伸ばす。
助けて!
ここから俺を…
でも…
その手は光に届く一歩手前で手折られ、叫びたいのに、カラッカラに乾いた喉が張りついて、それすらも叶わない。
藻掻けば藻掻くほど、今度はもっと深い闇に引き摺り込まれて行くんだ。
まるで底なし沼みたいだな…
こんな時思い出すんだ…
母ちゃんに捨てられた、幼い日の俺の姿を…
確か、あの時も俺はこうして、電気の消えた薄暗い部屋の片隅で、ただジッと膝を抱えていた。
声を上げることも、泣くことも出来ずに…
あの時の俺と、今の俺…
何が違う?
何も変わっちゃいない…
やっぱり俺は生きてるべきじゃないんだ。
もう、死なせて…
強く願うのに…
『智君…智…』
どうしてお前は俺の名前を呼ぶの?
脱力しきって、自分では動かすことも出来ないこの手に感じる熱いモノは…
翔の涙?
『帰っておいで?』
指先から伝わる翔の体温と、感情…
俺は生きていても良いの?
こんなにも穢れた俺なのに、それでも俺は生きていていいの?
翔、答えて?
翔…翔っ…!
『いいんだよ? 君は生きてていいんだよ?』
瞬間、目の前の闇が消え去り、俺は暖かい光に包み込まれた。