第18章 Fallen Ⅱ
カリカリカリ…
シンと静まり返った闇の中に、爪を嚙む音だけが響いた。
いつの間にか身に着いてしまった癖…
ふと自分の手を見ると、親指の爪だけが、ギザギザになっていた。
あぁ、そうだ…
松本のせいだ。
爪を噛むのは松本の癖だ。
それがいつの間にか俺にも伝染(うつ)ったんだ…
そう言えば…
あん時の松本、酷い顔してたよな…
二宮だって、ただでさえ生っ白い顔を、余計に白くしちゃってさ…
二人とも今にも倒れそうな面してたっけ…
刺されたの、俺だってのにな?
笑っちゃうよ…
マサキは…
マサキはどうなったんだろう?
アイツのことだから一人で泣いてんだろうな…
ごめん、マサキ…
お前を狂わせたのは、俺だ…
ごめん…
俺がお前を…
俺がお前を壊したんだ…
俺が…
俺が俺が俺が…!
もう何も見たくない…
もう何も聞きたくない…
もう何も…感じたくない…
痛みも苦しみも…もう何も…
このまま消えてしまおうか…?
そうすれば誰も苦しめなくて済む。
そうすれば誰も泣かなくて済む。
俺が消えれば…
それでもここから救って欲しいと願うのは、
俺の我儘なんだろうか…?