第17章 Fallen
翌日も、その翌日も…
三日を過ぎても、智君が目を醒ますことはなかった。
医師の診断によれば、麻酔は切れている筈だし、術後の経過も良好との事だった。
原因として考えられるのは、智君本人が心を閉してしまったのではないか、と…
どちらにせよ、この状態が長く続くことは、あまり喜ばしいことではない、と医師は顔を曇らせた。
「大野には受け入れ難い現実が待ってるのかもしれないな…」
岡田がポツリ呟く。
考えてみれば、岡田の言う通りなのかもしれない。
智君が刑務所で、どんな酷い扱いを受けて来たのか、俺達には測り知ることは出来ない。
でも、智君が心を閉してしまいたくなる程、辛い目に合って来たことは紛れもない事実。
辛い現実から目を背けたくなる気持ちは、痛い程に分かる。
でもね、智君?
俺は待ってるよ、君が目覚めるのを…
手術から一週間を過ぎた頃、なんの変化もない状況に業を煮やしたのか、岡田が溜息混じりに呟いた。
「このままここにへばりついてても、俺達に出来ることは無い」
岡田の言葉は、もっともな意見だった。
俺達には祈る以外に、どうすることも出来ないのだから。
いくら交代で付き添っていたとは言っても、岡田にもそろそろ疲れが出て来ているのは、その様子からも見て取れた。