第17章 Fallen
長い長い一夜だった。
廊下の窓から差し込む朝日と、俄かに慌ただしくなって来た院内の雰囲気に、漸く長い一夜が終わったことに気付く。
「朝、か…」
隣で岡田が一つ伸びをした。
「岡田、お前酷い顔してるぞ?」
髪は乱れ、目の下にはクマまで作っている。
「お前こそ、髭生えてんぞ?」
俺達はお互いに顔を見合わせては、クスクスと笑い合った。
その時だった、医師が数名の看護師を引き連れて、俺達の前を通り過ぎた。
そして智君の病室の前で足を止めると、刑務官と言葉を交わし、病室のドアを開いた。
ピッ、ピッ、っと規則正しい機械音が廊下に漏れ聞こえる。
それはまるで、智君の鼓動のようで…
「なぁ、岡田…? こんな時ってさ、自分の無力さ呪いたくなるよな?」
再び閉ざされたドアに視線を向けたまま、独り言のように呟く。
「こんなにも近くにいるのにさ、祈ることしか出来ないって…、どんな地獄だよ…」
扉の向こうに、傷ついた君が眠っているのに…
無力な俺は、この指一本触れることすら叶わずに、ただこうして祈ることしか出来ないなんて…
ねぇ、智君?
俺に何が出来る?
ねぇ、答えてよ…
君のために、俺は何をしたらいい?
どうすれば…