第17章 Fallen
病室の前には、当然だが、二人の刑務官が立っていて、俺達の姿を見た途端に訝しげな表情で顔を見合わせた。
「現在は面会謝絶になっています。今日のところは一旦お帰り下さい。何か変化がありましたら、こちらからご連絡差し上げますので」
一人の刑務官が表情を一切変えること無く言う。
見ると、ドアには『面会謝絶』のプレートが下がっていた。
だが、まるで決まり文句のような言葉を、そのまま受け入れる俺達じゃあない。
「ここで待たせて貰うくらい、問題はありませんよね?」
俺は病室の前に並べられたベンチを指さした。
二人はまた顔を見合わせたが、観念したのか“どうぞ”と一言だけ言った。
「何か飲み物でも買ってくるよ。コーヒーでいいか?」
俺をベンチに座らせ、岡田がポケットの小銭を探る。
「ああ、済まないな…」
疲れた…
ほんの数時間の間の出来事なのに…
身体はおろか、心までもが今にも悲鳴を上げそうなくらいに、疲れ果てていた。
でも、今ここで俺が弱音を吐く訳にはいかない。
智君だって闘ってきたんだ。
それに今だって…
「今は何も考えるな。大野が早く回復することだけを祈れ」
いつの間に戻ったのか、岡田が俺の頬に缶コーヒーを押し当てた。
「ばか、熱っちぃよ…」
岡田の手から缶コーヒーを受け取ると、俺はそれを両手で握り締めた。