第17章 Fallen
一刻も早く智君の元へ…
逸る気持ちを抑え切れず歩を進めた俺を、岡田の手が引き留めた。
「井ノ原医務官と長野刑務官、でしたっけ? 後日ゆっくりお話を伺いたいんですが、宜しいですね?」
極めて穏やかな口調の岡田だが、その目は鋭い光を放っている。
「場合によっては大きな問題にもなり兼ねませんよ?」
もしもこのことが公になれば…刑務所はその管理体制を問われることになる。
更には国の威信を脅かすことにもなり兼ねない。
何故なら、刑務所という機関は、国家権力の元に成り立っている、言わば権力の象徴とも言える機関なのだから。
「ご協力、願えますよね?」
この二人だって所詮国家公務員…
一歩間違えれば脅しとも受け取られ兼ねない、核心を突いた岡田得意のやり方だ。
二人は岡田を前に、困惑した顔を見合わせると、無言で頷いて見せた。
「ありがとうございます。では、私達はこれで…」
行くぞ、と岡田が俺の背中を軽く叩く。
「あ、ああ…」
俺は呆然と立ち尽くす二人に軽く頭を下げた。
そして岡田に促されるまま、水を打ったようにシン静まり返った深夜の病院内を、智君の病室に向かって歩を進めた。