第17章 Fallen
医師が軽く頭を下げ、その場を立ち去ると、女性の看護師が俺の吐き出したモノを始末した。
侑李は長瀬さんの胸に顔を埋めて泣いていた。
「立てるか?」
岡田が俺の背中を摩った。
「どうする? 今夜は一旦帰るか?」
俺はその言葉に首を横に振って応える。
智君をここに一人残して帰るなんて、出来る訳がない。
少しでも…
例え触れられなくてもいい…
少しでも近くに…
智君の近くにいたい…
俺は縋るような思いで俺を覗き込んだ岡田を見つめた。
「分かった。俺も付き合うよ」
岡田に支えられながら、漸くノロノロと立ち上がった俺を、眩暈が襲う。
「大丈夫か? やっぱり今日のところは帰った方が…」
「だめだ…。智君を一人にして帰れない」
「無理すんな、櫻井…」
岡田を困らせるつもりなんて、これっぽっちもない。
俺の我儘だってことも…
ただ俺は、きっと一人で泣き続けて来たであろう智君の傍にいて上げたい…
それだけなんだ。
身体だって、それに精神的にも人のことを気遣っている余裕がないことは、十分過ぎるほど分かっているんだ。
でも…
「俺じゃなきゃ駄目なんだよ…。俺が傍にいて上げないと…。もうこれ以上智君を…」
岡田が一つ息を吐いた。
「分かったよ、櫻井。いような? 大野の傍に、な?」
済まない、岡田。
お前の気持ちを知っていながら、俺は…