第17章 Fallen
言葉の先を急かす者は、誰一人としていなかった。
ただじっと、医師の顔を見つめていた。
「先ほども申し上げた通り、詳しいことは術後の経過を見て見ないと何とも言えないんですが…多少の障害が残ることは大いに考えられます。日常生活には問題はない、とは思いますが…」
”日常生活には…”
その言葉の意味を、混乱する頭の中に巡らせる。
その時、再び手術室の自動ドアが開き、ステンレス製のトレーを手にした看護師が、医師に向かってトレーを差し出した。
「それは…?」
岡田がトレーの中を覗き込む。
「患者の右足大腿部に刺さっていたマイナスドライバーです」
トレーの中には、赤黒い血液が付着したドライバー。
大凡、鋭利とは思えないソレが、智君の足に…?
どれ程の力でソレが突き立てられたのか…
想像しただけで込み上げてくる吐き気を、必死で堪える。
「あぁ、あとこれは非常に申し上げ難いことなんですが…」
医師が帽子を取り、頭を搔いた。
「実は日常的に性的暴行を受けていたと思われる痣が、いくつかありましてね…」
医師がその先の言葉を濁す。
「それは一体どう言う…?」
流石の岡田も動揺を隠しきれない様子だ。
「レイプ…されてた、ってことですか?」
瞬間、目の前が真っ暗になり、一度は堪えた筈の吐き気が再び込み上げてくるのを抑えきれず、俺はその場に蹲り嘔吐した。