第17章 Fallen
手術室へと続く自動扉が開き、中から術着を纏った医師が、マスクを外しながら出てくる。
俺は居ても立っても居られず、ベンチから立ち上がると、医師に掴みかかった。
「智くんは…っ! 智君の容体は…」
医師の胸倉を掴み、乱暴に揺さぶる。
その時、医師の背後を、智君を乗せたストレッチャーが通り過ぎた。
血の気を無くした青白い顔に酸素マスクを着けられ、力なく投げだされた腕には点滴の管が繋がれている。
「智っ! さとっ…!」
俺は医師を押し退けるようにして、ストレッチャーに駆け寄る。
あと数十センチ…いや数センチ…
智君に触れられる…
そう思った瞬間、俺の前に刑務官が立ちはだかった。
「どけ…。どけよぉっ!」
刑務官を押し退けようと腕を突っ張るが、屈強な刑務官を前に非力な俺は成す術もない。
それでも尚、智君を乗せたストレッチャーに追い縋ろうと藻掻く俺を、岡田が背中から羽交い絞めにする。
「櫻井、落ち着けって…な? 今は耐えろ…」
岡田の感情を抑えた声に、俺の身体から力が抜けて行く。
「さとっ…」
こんなにも近くにいるのに…
手を伸ばせば触れられるのに…
俺はなんて非力なんだ…