第17章 Fallen
「申し遅れました。私は彼の弁護を請け負った弁護士です」
岡田が長野刑務官に向かって名刺を差し出す。
「彼は私の同僚で、櫻井弁護士。受刑者とは幼馴染でして…」
「あなたが…?」
それまで黙って手術室に意識を集中させていた井ノ原医務官が、驚いたように声を上げた
「あなたのことは彼から聞いてます。…その、恋人…だ、と…」
「智君が…? 智君がそう言ったんですか? 智君が…」
俺をまだ”恋人”だと…
瞬間、必死で堰き止めていた筈の涙が頬を伝う。
足元がグラつき、その場に倒れるように崩れる俺を、岡田の腕が支えた。
「大丈夫か、櫻井?」
俺をベンチに座らせ、岡田が二人に向き直る。
「何が原因でこのようなことになったのか、話して頂けませんか? 私も…彼も立場上知っておく権利があると思うんですが…」
淡々とした口調の岡田の物言いに、長野刑務官が唇を噛んだ。
そして、岡田の耳元に口を寄せると、周囲を気にしながら、声を潜めた。
「実はまだ調査中でして、詳しいことは分かっていないんですが…彼の犯した事件と関係していることは確かです」
智君の事件と関連が…?
でも智くんは…
その時、手術中を知らせる赤い光が、緑に変わった。