• テキストサイズ

Cage -檻ー【気象系サスペンスBL】

第17章 Fallen


その場にいる誰もが声を発することのない、重苦しい時間だけが流れた。

廊下の向こうから聞こえた足音に、視線を向ける。

薄闇の向こうからこちらに向かって歩いてくる人影。

一人は刑務官らしき人と、もう一人は白衣姿の男。

二人は迷うことなく手術室の前まで歩み寄ると、警備中の刑務官に声をかけた。

「まだ終わらないのか?」

白衣姿の男が苛立ちを隠せないといった様子で床を蹴る。

そして俺達の存在に気付くと、その頭を少しだけ下げて見せた。

「あの、あなた方は…」

岡田が二人に向かって声をかける。

「私は刑務官の長野です。で、こっちが医務官の井ノ原先生です」

およそ刑務官らしくないその人は、被っていた帽子を取ると、俺達に向かって深々と頭を下げた。

何のために?

それまで抑えていたモノが、沸々と湧き上がってくる。

「あのっ…!」

俺は思わず立ち上がっていた。

「一体どうしてこんなことに? 誰がこんなことを? なんでっ…!」

押さえきれない感情が、堰を切ったように溢れてくる。

「櫻井、落ち着け」

今にも掴みかかろうとする俺を、岡田が抑え込む。

「失礼ですが、あなた方は彼の…」

長野刑務官が申し訳なさそうに言った。
/ 609ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp