第17章 Fallen
病院に着くと、長瀬さんが落ち着かない様子で俺達を出迎えてくれた。
長瀬さんを先頭に、明かりの消えた病院の廊下を歩く。
「状況は?」
俺の代わりに岡田が長瀬さんに聞いた。
「手術が終わってみないと、まだ何とも…」
薄闇でも分かる、長瀬さんの苦渋に満ちた顔。
「さっき電話を貰ってから、もう二時間は経ってますよね?」
岡田が腕の時計を見て、一つ息を吐いた。
「あっ、こっちです」
長瀬さんが指さした先に、手術中を知らせる赤い光。
その前には警棒を手にした二人の刑務官と、ベンチに座って小さな背中を丸めた侑李の姿があった。
「櫻井さん…」
相当泣いたのか、侑李の目は赤く腫れている。
「智くんはまだ…?」
赤い光に目を向け、侑李が小さく頷く。
今にも倒れそうな顔色の侑李をベンチに座らせ、俺もその隣に腰を降ろした。
岡田が刑務官と何を話しているのかは気になったけれど、侑李の様子も気になっていた。
「大丈夫か?」
本当は侑李のことを気遣っている余裕なんて、俺にはなかった。
でも俺には確信があったから…
「智くんはきっと大丈夫だから」
智君が俺を置いて逝く筈がない。
信じてるから…