第16章 Limit
「誰のこと考えてんの? まさか、その手紙の人のこと考えてるとか、ないよね?」
低く、冷たい声…
初めて聞くマサキの声に、背中を冷たいものが伝う。
「まさか…。んなわけ…!」
慌てて封筒をロッカーに仕舞おうとしたその手を、マサキの氷のように冷えた手が掴んだ。
「なに…すんだ…。離せよ…」
早鐘のように打ち付ける鼓動と、頭の中で鳴り響く警鐘が煩い。
「な、なぁ、痛いって…」
俺の手を掴む手に力が籠められる。
「おい、マサキ…っ!」
振り向いた俺の視界に飛び込んできたのは、まるで感情を無くした雅紀の顔…
怖い!
咄嗟に俺はマサキを突き放そうと、もう一方の手を伸ばす。
でもその手を、マサキの手はいとも簡単に捉えてしまう。
マサキの手がギリギリと俺の両手首を締め付ける。
「な、なぁ、マサキ…頼むから、手ぇ、離してくれよ…。な?」
「…やだね、離さない」
懇願する俺を嘲笑うかのように、マサキの唇の端が上がる。
ヤバい…
コイツ、マジだ…
「そんなにソイツのこと好きなの? 俺よりも? …いや、違うな…」
マサキの顔がフッと歪んだかと思った、その瞬間、俺の身体は壁に向かって投げ飛ばされた。
「…痛ってぇ…」
頬に貼られたガーゼから滲んだ血が、ポタポタと畳に染みを作った。