第16章 Limit
硬い壁に打ち付けられた衝撃と、全身を襲う鈍い痛みに蹲る俺の前に、マサキがしゃがみ込む。
その手には、一瞬の隙を突いて奪われてしまった翔からの手紙と、ドライバーが握られている。
俺はその時になって、漸く気付いた。
俺達はとんでもない勘違いをしていたってことに…
まさか…
マサキだったのか…
「ふふ、どうしたの? 声も出せない? そうだよね? サトシもジュンも俺のことなんて、これっぽっちも疑ってなかったもんね? …バカな奴ら」
声を出すことも出来ず、ただ怯えて首を振るだけの俺を、マサキの残酷な笑みを湛えた顔が見下ろす。
「マサキ…どうして…?」
漸く絞り出した声は、酷く掠れている。
「サトシさぁ、俺が本気でお前に惚れてると思ってた? んなわけないじゃん」
嘘、だろ?
嘘だと言ってくれよマサキ!
そんな俺の思いを他所に、目の前で散り散りに破かれる翔からの手紙。
「やめろっ! やめてくれ! お願いだから、やめて…」
叫びが涙になって溢れ出す。
畳に散らばった紙片を、震える手で掻き集める。
「こんな手紙一つで喜んじゃってさ…。ほんっと、お前ってお目出たいよな?」
マサキの手が俺の顎を掴み、無理矢理に上向かされる。
そして感じた頬の痛み。
ガーゼはすっかり剥がれ落ち、ボタボタと赤い滴が畳に零れ落ちた。