第3章 Nightmare
カツーン、カツーン…
見回りの刑務官の規則的な足音に、徐々に脳が覚醒していく。
覚めきらない瞼を薄く開け、力の入らない身体を引きずるようにして布団に潜り込む。
消灯時間はとうに過ぎているようだった。
カツーン、カツッ…
足音が突然止まった。
そして聞こえた金属と金属が触れ合う音。
ガチャンと音がして、俺の独房のドアが嫌な音を立てて開かれた。
薄らと目を開けると、俺を見下ろす人影。
顔は廊下の明かりで逆光になっていて見えない。
物音一つしない部屋に、ソイツの荒い息遣いだけが響いた。
俺の身体を得も知れぬ恐怖が襲う。
逃げろ!
頭の中で警鐘が鳴り響く。
でも身体が言うことを聞かない。
指先一つ動かすのだってままならない。
まさか…な…
そう思った瞬間、ソイツが俺の上に馬乗りになり、俺の顎に手をかけた。
「大人しくしてろよ?」
耳元で囁き、強引に口を開かれると、首にかけていた汗の臭いが染み込んだタオルで猿轡を噛まされた。
思わず見開いた視界を遮るように、布製の袋を頭からすっぽりと被せられ、首元を紐のような物でキュッと縛られた。
「騒いだら懲罰だからな…」
寝巻の襟元を掴んで無理矢理上体を引き起こされると、俺の背中を冷たい物が流れて行った。