• テキストサイズ

Cage -檻ー【気象系サスペンスBL】

第16章 Limit


「アイツの妹の件、お前が噛んでること、アイツは知らねぇんだよな?」

俺は視線を再び地面へと落とした。

「言えるわけないだろ…。俺がアイツの妹を…」

口が裂けたって言えない。
言ったらアイツは…

「でも、俺は殺っちゃいねぇ…。俺じゃ…」

「だろうな…お前に人は殺せねぇよ…」

「第一、俺、女相手に勃たねぇし…」

言ってしまってから恥ずかしさが込み上げてきて、俺は自然と顔が熱くなるのを感じた。

そんな俺に松本が「だろうな」と皮肉ると、フッと笑い、ベンチから腰を上げた。

「とにかくアイツには用心することだ。それに何かあったら俺に言え。アイツのあの目はマジでヤベェから…」

視線を前に向けたまま、尻に着いた砂を手で払う。

「気を付けろよ?」

そう言って松本はグラウンドに向かって走り出した。

俺は無言で松本の背中を見送った。

松本の背中越しに、マサキの視線を感じながら…

用心しろ、か…

頭の中で松本の言葉を反覆する。

マサキが心の奥に、得体の知れない闇を抱えていることは、俺にも気付いていた。

それがドス黒い感情だ、ってことも…

屈託のない笑顔の合間に一瞬見せるあの顔…

怒りに満ちた…でも、どこか寂しげな顔…

それらは多分、俺に向けられている。

確証なんてない。
ただ漠然とそう思った。
/ 609ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp