第16章 Limit
読み終えた手紙をきちんと畳み、封筒の中に戻した。
それでも堰を切ったように流れる涙は、止めどなく溢れては封筒を握り締めた手に落ちる。
「サトシ、泣いてるの?」
マサキが俺の肩を抱く。
「どうしたの? そんな泣く程の事が書いてあったの? ねぇ、サトシ?」
俺はそれに首を振ることでしか応えられず、マサキは苛立ち気味に俺の肩を揺すった。
「ごめ…暫く一人にしてくれないか…」
「何でだよ? そんな泣いてんのにさ…。オレ、心配してんだよ?」
ここでは一人になる事なんて出来やしない。
分かってる。
でも今は…
今だけは…
「なあ、ってば…」
「オイ、マサキ。ほっといてやれ」
松本の威圧感をある声に、俺の肩を揺するマサキの手がピタリと止まる。
「で、でも…」
尚も食い下がろうとするマサキに、松本が続ける。
「お前には関係の無いことだろうが? ほっといてやれ」
もう一度同じ言葉で制され、マサキが一つ舌打ちをした。
そして長机を一蹴りすると、俺から離れ、向かい側の壁に背中を預け、ドカリと腰を下ろした。
「…んだよ、人が心配してやってんのによ!」
心配か…
お前は俺が結の事件の関係者だと知ったら…
それでもそう言えるのか?
言えねぇよな、きっと…
俺は翔からの手紙を、専用のロッカーの中に仕舞った。