第15章 Urge
行きよりは幾分軽くなった心を抱いて、俺は刑務所を後にした。
以前よりは少し痩せてはいたけど、それでも智君の姿を見れただけで…声を聞けただけで良かった。
車に乗り込んだ途端、抑え切れない感情がドッと込み上げてきて、俺は声を殺すことなく泣いた。
一頻り泣いて落ち着いた頃、俺は岡田に電話をかけた。
岡田は忙しくしていたのか、電話には出なかった。
着信さえ入れておけば、岡田なら後からでも連絡をくれるだろう。
そう思って車のエンジンキーを回した。
その時だった。
俺のスマホが小刻みに震え出した。
表示されていたのは岡田の名前ではなく、父の名前だった。
珍しいこともあるものだ、と液晶をタップした。
「もしもし、お父さんお久しぶりで…」
「翔か…。お前今日あの子の面会に行ったそうだな?」
俺の言葉を遮るように、低く重圧のある声。
「どうしてそれを…?」
「そこの所長は、私の古くからの友人だ。それに刑務官にも何人か顔見知りがいる。面会申出書の名前を見て、もしかしたらと私に連絡を横したんだ」
父も、俺と同じ弁護士だ。
当然刑務所内部に知人がいたって、なんら不思議なことはない。
「お前はまだあの子のことが忘れられんのか? あの子は殺人犯なんだぞ? しかも卑劣な行為をした上に、殺人に及んだ凶悪犯なんだぞ? 分かっているのか?」
同じ犯罪者を弁護する立場の父からは聞きたくなかった言葉が、俺の胸を締め付けた。