第15章 Urge
「離せって…」
感情の篭らない、冷たい声。
そんな声、始めた聞いたよ…
「いやいや、ちょっと待てって…」
刑務官でありながら、気弱そうな男が智君の肩を叩く。
「落ち着けよ、な? せっかくお前に会いに来てくれたんだから。な? その…恋人、なんだろ?」
”恋人”…
その一言に、智君の顔が引き攣る。
そう、俺は受刑者との関係の記入欄に”恋人”と書いた。
そう書くことに、なんの躊躇いもなかった。
だって智君と俺が恋人同士であることは、紛れもない事実なんだから。
「智君、座って? 話ししよ?」
「お前と話すことなんてねぇよ。さっさと帰れ…」
智君が視線を床に落としたまま、吐き捨てるように言う。
視線一つ合わせる気はないのか…
でも俺だってここまで来て、黙って帰るつもりはない。
「君にはなくても俺にはあるんだ、君と話すことが…。だから座って?」
立ち尽くしたままの智君の腕を刑務官が引き、強引に椅子に座らせた。
智君との距離が、少しだけ近くなった。
それだけでも俺にとっては…
「少し瘦せた? ちゃんとご飯は食べてるの?」
一方通行だって分かってる。
それでも俺は言葉を続けた。
「ねぇ、教えて欲しいんだ? どうして俺以外の人を…?」
どうしても聞きたかったことを、俺は迷いなく口にした。