第15章 Urge
翌日、俺は体調不良を理由に休みを取った。
所長はこの忙しい時期に…と愚痴ったが、俺はそれを綺麗に右から左へと流した。
一日休めば、その皺寄せは半端ないことは、俺自身理解らない訳でもなかった。
今すべきことを後回しにはしたくなかった。
今自分の気持ちに従わなければ、前を向いて歩けなくなる…俺はそう思った。
岡田には本当のことを伝えた。
智君に会いに行くと…
岡田は何も言わず、ただ「分かった」と言ってくれた。
申し訳ないという気持ちがない訳じゃなかった。
岡田の俺への想いを知っているから…
でもだからこそ、岡田には嘘は付きたくなかった。
どちらにせよ、岡田にはすぐにバレるんだろうが…
自宅から車を走らせること一時間。
反り起つ高い壁と、重厚な鉄の扉が俺を出迎えてくれた。
面会受付所に行くと、”面会申出書”に記入を求められた。
仕事柄初めての経験ではない。
「弁護士さん…なんですか?」
一通り申出書に目を通した警備員が訝しむように俺を見た。
「えぇ、一応…。でも今日は接見とかじゃなくて、プライベートで…」
そのためにスーツは着てこなかった。
当然弁護士バッジだって机の引き出しに締まってきた。
「分かりました。では、一応身分証明書だけお預かりしても宜しいですかね?」
俺は財布から運転免許証を取り出すと、それを手渡した。