第15章 Urge
事務所には戻らず帰宅した俺は、軽めの夕食を済ませ、普段よりも少しだけ熱めのシャワーを浴びた。
シャワーを浴び終え、火照った身体を冷まそうと、冷蔵庫のビールに手を伸ばしかけたが、やめた。
グラスにミネラルウォーターを注ぎ、一気に飲み干すと、水の冷たさが全身に染み渡るような、そんな気がした。
濡れた髪を適当にタオルで拭き、疲弊した身体をベッドに投げ出した。
一人で眠るには広すぎるベッドの傍らには、智君が気に入って愛用していたブランケットが置いてある。
俺はそれを引き寄せ、鼻を近づけると、クンとその匂いを嗅いだ。
微かに残った智君の匂い。
『もう俺に関わるな』
君はどんな思いでその言葉を口にしたの?
きっと俺のためだよね?
でもさ、智君?
俺には君が全てなんだよ?
君がいなければ俺は…
俺は智君が残していった香りに包まり、そっと瞼を閉じた。
眠れる筈なんてない…
そう思っていたのに、まるで智君の体温をすぐ側で感じているような気がして、徐々に迫り来る睡魔に身を委ねた。
考える必要なんてない。
答なんて、最初から決まっているんだから。
智君が俺をどんなに跳ね除けようとしたって、俺の心が君から離れることはない。
俺の心は、君と共にあるから…
君への想いが、俺の全てだから…
智君、君に会いに行くよ…