第14章 Dilemma
「智! おい、てめぇ何やってんだ! おいっ!」
松本の切羽詰まったような叫びがとても遠くに聞こえる。
助けて!
声に出来ない叫びは、身体を駆け巡るむず痒さを伴った火照りよって掻き消される。
どうすることも出来ずどんどん昂ってくる中心を、膝を擦り合わせて堪える。
「ククク…。今夜はありがたいことにギャラリーもいることだし、楽しめそうだな…」
下碑た笑いが無機質な冷たい空間に響く。
「ほら、立て…」
坂本が俺の背後に回り、俺の身体を引き上げる。
脇から差し込まれた坂本の腕が胸の先に擦れる度、下半身がジンジンと疼く。
「なんだ、感じてるのか?」
感じてない…!
感じてなんかいるもんか!
首を振ってどんなに否定しても、まるで心と身体が別物のようで…
なんとか意識を繋ぎ止めるのがやっとだった。
「てめぇ、智を離せ!」
「うるせぇなぁ…。ほら、お前の可愛い声聞かせてやれ」
坂本の腕が俺を抱え込み、俺は引き摺られるように鉄格子に身体を押し付けられた。
「ほら、よぉく見とけ」
「…智! しっかりしろ! 智!」
「松…本…」
朦朧とする視界の中に、松本が硬い鉄格子を蹴破ろうと足を振り上げる姿が映った。
何度も何度も…
俺の名前を叫びながら…