第14章 Dilemma
カツーンカツーン…
聞き覚えのある足音は、俺のすぐ近くでピタリと止まった。
ガシャンと鉄格子の鍵が開けられる。
「良く効いてるみたいだな?」
声と同時に頬を冷たい指先がスッと撫でられる。
「…おまっ…なん…で…」
霞んだ視界の中に見えたのは、頭からすっぽり覆面を被った男。
顏なんて見なくても分かる…
坂本だ…!
「なんでかって? 決まってるだろ? お前の身体が忘れらんねぇからだよ」
丸めた身体が強引に押し開かれ、ボタンがゆっくりと外されていく。
「やめろ…やめてくれ…」
抵抗しようにも強い力で抑え込まれた両腕では、それすらも叶わない。
「止めてやってもいいんだぞ? でもここで止めたら、苦しいのはお前なんじゃないのか?」
シャツのボタンが全て外され、上半身が外気に晒される。
不思議と寒さを感じないのは、全身を襲う火照りからなのだろうか…
上体を引き起こされ、両手を後ろ手に回されると、そのままタオルのような物で拘束された。
「外せよ…なぁ、これ外せってば…」
到底受け入れてくれる筈のない願いを訴えるのは、何も怯えからなんかじゃない…吐き出しては中心に集まって来る熱を何とかしたかったからだ。