第13章 Invariable
痛む頭と重い身体を引き摺りながらシャワーを浴びた。
塗れた髪をタオルで拭きながら、滅多に開けることのない食器棚の扉を開けた。
確かここにあった筈…
数少ない食器を掻き分け、奥に手を入れると、角ばった箱のような物が指先に触れた。
やっぱり…
俺はそれを取り出し、食器を元の位置に戻すと、食器棚の扉を閉めた。
ガスコンロの前に立ち換気扇を回し、手にした箱を開ける。
智君が俺に隠れてこっそり吸っていた煙草が、箱の中にまだ数本残されていた。
箱の中から一本を抜き取り口に咥え、一緒に入っていたライターで火を点けた。
スッと一口吸い込み、吐き出すと、紫煙はあっという間に換気扇に吸い込まれて行った。
「馬鹿だな、智君は…。俺に隠れて吸うことなかったのに…」
俺が気付いてないとでも思ってたの?
ちゃんと気付いてたんだよ?
言ってくれればよかったのに…
どうして俺に隠れて吸ってたの?
そんなことで俺が君を嫌いになれる筈なんてないのにさ…
ねぇ、智君?
俺は君にとって、どんな存在だったの?
幼馴染?
恋人?
それとも…ただの友達?
違うよね?
そうじゃないよね?
智君?
君が遠いよ…