第13章 Invariable
続く沈黙に、先に耐えられなくなったのは、岡田の方だった。
「そろそろ俺帰るわ…」
ずっと握り締めていた缶をテーブルに置き、岡田が腰を上げた。
「でもお前車…」
弁護士が飲酒運転で捕まるなんて、それこそ笑いのネタにされ兼ねない。
「まだ終電間に合うだろ?」
「そりゃそうだけど…」
壁の時計に目を向けると、時計の針は丁度11時を僅かに過ぎた頃だった。
確かに終電にはまだ間に合う。
でも…
「車は休み明けで構わないから…」
ジャケットのポケットを探り、キーケースを取り出すと、その中から車のキーだけを外し、俺に向かって差し出した。
「分かった。でも、下まで送るよう」
車のキーを受け取り、テーブルの上に置くと、俺はソファーに深く沈めた腰を上げた。
でも…
「えっ…あれっ…?」
急に視界がグニャリと歪み、足元から崩れて行くような感覚に襲われる。
酔ってない…
そう思っていたのは、実は俺の勝手な思い込みで…
浴びるよう飲んだビールは、確実に俺の足元をふら付かせた。
倒れる…
そう思った瞬間、俺の身体は咄嗟に伸ばされた岡田の腕に抱き留められた。
「…っぶねぇ…」
安心したように吐き出された岡田の吐息が耳にかかった。
顔を上げると、岡田の顔がすぐ近くにあった。
吐息が触れ合うほど、そぐそこに…