第13章 Invariable
しこたま買い込んだ筈のビールは、あっという間になくなり、空になった缶だけがテーブルの上に並んだ。
いつもならとっくに酔っ払っている量なのに、不思議と酔えなかった。
それは岡田も同じだった。
「お前、案外強いんだな?」
空になった缶を握ったまま、岡田がクスリと笑う。
「そうか? そう言う岡田だって…」
翌々考えてみれば、岡田とはこうして酒を飲んだことなんて、今までなかった。ような気がする。
「でもさ…なんだろうな、全然酔えねぇんだわ…」
岡田がソファーの背凭れに背を深く預け、天を仰ぐ。
「何かあったのか?」
「何で?」
天を仰いだまま岡田が答える。
「いや、今日の岡田変だからさ…」
そっか、と小さく呟き、岡田がその瞼を閉じた。
「何だろうな、俺達の仕事ってさ…」
「それは…、あれだろ? 罪を犯した人に、罪を悔い改め、更生への道を開いてやることじゃねぇの?」
それが俺達弁護士の役目だと、俺はずっと思ってきたし、同じ弁護士でもある親父にも言われ続けてきたこと。
「それが正論だよな? 俺だってずっとそう思って来たよ。でもな、櫻井。それって本当に正しいことなんだろうか?」
それっきり岡田は口を閉ざしてしまった。